11.28.2009

坂の上の雲

いよいよ明日から、
NHKで「坂の上の雲」のドラマが始まります。

僕の好きな時代小説家、
司馬遼太郎の代表作。
全8巻の長編です。
昭和43年から47年に連載されました。

明治維新をへて、
ひたすら西洋文化を取り入れようと
刀、ちょんまげを捨てた日本人。

徳川の歴史は封建制度という
政治システムによって260年続いていました。
平和が続き、戦争がなかったため、
新しい武器が作られることがありませんでした。
そして徳川家は新型の造船を固く禁じていたので、
今でいう核兵器のような、
相手を威嚇できる軍艦、大砲などは持っていませんでした。

そんな弱小日本が明治維新の28年後の
日清戦争(1895年)
日露戦争(1905年)
で次々と列強(大国のこと)に勝利していくのです。

その急激な変化ぶり、
そして、異様なほど全体が一つの目標に向かい、
その力がいかなる大いなるものをも打ち砕いてしまうという、
爽快でいて恐ろしくも感じる物語を紡ぎだしています。

別に戦争を美化するつもりは毛頭ありません。
ただ、読み物としては相当面白いです。
日本に住む人なら是非読んでもらいたい。

僕は世界を旅し、
日本に帰ってきてからこの本に出会いました。

当時は日本の同一性などが好きになれず、
日本を飛び出したわけですが、
実際世界を旅して、
逆に日本のことを全然知らないことに気付いたのです。

日本のことを好きになれなかったのは
学校教育がそうさせていたことも大きかったと思います。
愛国心の否定・・・
社会全体がそんな色で染められていました。
それは戦争の反動と、
レフトウィング的思想が強かったという
時代背景もあったのだと思われます。

ところが海外へ行くと
日本人以外の人たちは自国愛がとても強いのです。
おかしい・・・

まあ、偏狭な愛国心や選民思想はいかんですよ。
しかし、海外に出て、
「あ~、早く日本食食べたい」
「日本の温泉つかりたいな~」
「日本っていいところだな~」
と思うのは自然に思う心。

全てを愛国心の名の下、
いけないことにすることに無理があるなぁと
思い始めていたのです。

そこに「坂の上の雲」が目に飛び込んできました。

それはもう、
日本という国のポテンシャルに誇りを感じ、
今ある僕は先人たちの努力の上に立っているのだと
思い知らされました。

以前には僕の心になかった、
ある、帰属することの心地よさが芽生えたのです。
愛郷心ですね。
それ以来、日本をひたすら旅し、
産まれた場所を知ることに費やしました。

ただ、司馬遼太郎の小説は
いわゆる司馬史観というバイアスがかかります。
それはざっくり言いますと、
明治の戦争は是、昭和の戦争は非
というものです。

もしくは明治は自衛のための戦争。
昭和は自衛を超えた権益獲得の戦争・・・

この司馬史観は今でも論争の的になっています。

確かにどの戦争をとっても是ということはできないし、
残念ながら、完全に非ということもできないのです。
ただ歴史からその事実を知ることができるだけのこと・・・

そこに司馬史観というテイストを付けたのは
僕は勝手に想像するに、
偏った社会全体に蔓延するレフトウィング的思考、
アンチ日本的思考に、
司馬遼太郎は切り込んでいったのだと思うのです。

日本キライっておかしくないか?
自分が生まれ育ったところを否定することってどうなんだ?
そう感じた司馬は
明治を肯定し、
昭和を血祭りに上げることによって、
その可笑しな蔓延する思考・思想にカウンターを入れたのだと。

昭和43年・・・
大学紛争真っ盛りな時ですよ。
どんなに勇気のいる事だったことでしょう。

僕の勝手な想像ですが、
そんな司馬遼太郎に拍手を送りたい。


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