5.07.2009

蜂の間で起こっていること

膨大な情報量。
フィニッシュするのに時間がかかりましたよ~

「ハチはなぜ大量死するのか?」
ローワン・ジェイコブセン著




友人が現代版
「沈黙の春」(レーチェル・カーソン著)
だと教えてくれたので、早速読んでみました。

「沈黙の春」は
1950~60年代の環境問題について語られているので、
人間の無知な環境破壊については考えさせられるものの、
実感はいまいち湧いて来なかったのを覚えています。


ミツバチが大量死している。
2007年までに北半球のハチの4分の1が消えた。

本書は
この、ミクロで起こっている大事件を解明しようと、
探偵がごとく、
犯人と思しきウィルスや原虫などを細かく調べ上げ、
しらみつぶしにしていく展開となっています。

結論から言いますと、犯人は特定されません。

しかし、この著者が明らかにしていく過程で現れる、
「疑わしき者たち」
を知っていくと、犯人は特定されないものの、
確実に原因を作っているだろう大物が露わになります。

人間・・・

今、人間が関与してハチの世界で問題になっていること。

・多くのウィルスに侵入されまいと抗生物質を投与しているが、
 ウィルスは耐性をつけて、絶滅はされていない。

・ヘギイタダニを駆除するために強い殺虫剤を投与するが、
 最初は効果があるものの、すぐに防御力をつけてしまう。

・夢の農薬として開発された「ネオニコチノイド」。
 その葉や実を食べてしまうと虫は痺れ、死んでしまうが、
 ハチも例外でない。

・高い付加価値の果実を得るためには多くの花を
 受粉させなければならないので、大規模農園では、
 それこそ何万箱というハチの巣箱を必要とする。 
 そのためにハチは
 長い距離を移動させられて酷使させられる。

・女王蜂が輸入され、産まなくなったらハイ、さようなら!

・様々な要因で弱ったハチにはサプリをあげ、
 シロップまであげてしまう!
 (ハチは何をするために生まれてきたのだろうか?)

このような複合的な要因が絡み合って、
大量死が起こっているのだろうと著者は推測しています。

きっとその通りだと思います。

限界なんですよ。

ここでは個別的な原因を探るよりは、
巨視的な視点に立ちかえって捉える事が大切でしょう。

さてさて、上記に挙げた、
ハチの世界で問題になっていることを見ていると、
気づくことがあります。
それは、人間をはじめ、家畜、動植物などで、
今、起きている問題の鏡となっているということです。

人間なんて、
まさに当てはまることが多いのではないでしょうか!

ただ、利潤のみを追求するために働き、
そして疲れ、弱ったのでサプリを飲み、
ウィルスに冒され、抗生物質を飲むが、
耐性のブドウ球菌が新たに生まれ、
さらに新しい抗生物質を作るが、さらに耐性をつけられ・・・

危機を煽るつもりはありませんが、
この先、どうどうめぐりなことは明らかです。

著者はこの問題の解決の手がかりとして、
オーガニックに養蜂している人の
言葉にヒントを得ています。

「復元力」

そう、まさに医療もこの言葉に集約されるのですが、
自分に内在する治す力、
復元する力を最大限に引き出せるように
鍛えていこうということなのです。

さらには共生というキーワードも出てきます。
ダニが発生するのを根底から叩くのではなく、
ある程度の発生は許し、
共生することで均衡が保たれるというものです。
これを広義で多様性とも言います。

復元力を養い、
多様性を身につけるためにはどうすればいいのか?

皆一斉に余計なことを止めましょうw

しかし、これは難しい。
そして忍耐が要求される。

もちろん科学をないがしろにして、
昔に戻れということではありません。

ただ、複雑になり過ぎたシステムの澱をすくい取り、
身軽にすれば、シンプルにすれば、
余裕が生まれて、
新しい回路が見いだせるではないかと思うのでした。


久しぶりに環境に関して考えさせられる一冊でした。

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