玄は腰に爆弾を抱えています。こんなエピソードが…
「チッ!」
玄は日本一周が始まってすぐの青森あたりから、
ことあるごとに
しかめ面をし、少し怒気を含んだ口調で、
「腰が入ってね~んだよ。」
と言い放っていました。
腰が入らない?
リュウジと私はその意味不明な言葉をしばらく聞き流していました。
玄は腰に手をやり、右に回してみたり、左に回してみたり、
いろいろ動かして、
最後に唾を吐き捨てるように、
「チッ!」
とやる。
いつも納得いかないらしい。
その後、長いバイクの旅で、
痛みの来る周期が狭まってきたのか、
「腰が入らね~。」
と何度も言いました。
目は血走り、言葉は尖り、額に血管が浮き出ています。
そして次第にアクションも大きくなっていく。
右に上半身をひねり、次に左をひねって、
一気に大きく右にひねった!
「バキバキバキ!」
耳に響く強烈な音。
しかし玄は口を真一文字にし、爪楊枝を使った後の、
「シーッ」
をやり、首を横に振った。
入っていないのか!
見るに見かねたリュウジと私は相談して阿波に来る直前に、
「それ、入ってるでしょ。」
と玄に言いました。
「いや、おめ~らにはわかんね~んだよ。入ってね~んだ。」
つづく
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