「バロン~アロン~ギロン~」
「バロン~アロン~ギロン~」
一応呪文だった。
それは古代の暗号のイメージ。
目をつむりながらマンホールの上に立ち、
昔テレビで見た忍者のように指を組んで呪文を唱えていた・・・
「バロン~アロン~ギロン~」
「バロン~アロン~ギロン~」
小学校中学年ころの事。
習い事の帰り道。
私は一人、あれこれ気になる物に
気を引かれるがまま道草をくっていた。
真っ直ぐに帰る気はさらさらない。
缶をけったり、草を引き抜いたり、昆虫を見つけたり、
小学生の男にふさわしいだけの単純行動に明け暮れていた。
しかし、それらに飽きたときの次なる行動が違っていた。
「ワープしよう」
帰るのがかったるくなったのだ。
一瞬にして今いる位置から
遠く離れたところに移動してしまうという、
漫画やテレビで何度も見ているアレ。
私はそれが可能なのはマンホールだと直感でとらえていた。
「地下でどこでも繋がっているじゃないか!」
下水道は全国に張り廻っていて、
マンホールは駅のようなものだと思った。
駅の上に立てば、目に見えぬ何者かが私を運んでくれる・・・
小学生の私にもそれが人知を超えたものだと解っていた。
だからこそ呪文が必要だったのだし、
目をつむり、指を組む必要があったのだ。
まずは、あそこに見えるマンホールへ飛ぼう!
いきなり家の前にある、
見慣れたマンホールに飛ぶのは無理だろうから、
近場から練習。
かなり力の入った無茶苦茶な呪文を唱え、しばし待つ。
そして期待を込めてゆっくり片目を開けていく。
やっぱりダメか~
終始こんな感じで、
何度も失敗しながらも、何度も繰り返していた。
ヘンな小学生・・・
これをスピリチュアリティと呼ぶかどうかは別として、
私の発想はすでにこの頃から、
教えられた現実に収まることがない、
無邪気な、自由なものを得ていたのかもしれません。
つづく
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