7.24.2009

旅バナ ユーレイ便所はどう作られたのか? 1

23歳の頃。

僕の旅は目的も知識欲もなく、
ただただ、
右脳が直感したことに
体を反応させるだけのものでした

だから、
「能登半島歩きたい!」
と閃き、すぐに身体が能登半島の右端にあったのは、
あの頃の動きを顧みれば何の不思議もありません。

どうやって行き着いたのかは全く記憶がありませんが、
体は石川県珠洲市金剛崎にありました。
そこから輪島へ、
日本海を右に見ながら能登半島を闊歩するのです!

地図はこちら

なぜ歩いて旅をしたかったのかも覚えていません。
ただ、トムソーヤに憧れていたことは確かなので、
そんな冒険をしたかったのでしょう。

だからこそ、歩き始めて10分、
がタワワになっているのを発見し、
「もぎって食べるべし!」
と直感したのは当然の冒険心反射と言えるでしょう。

何個か失敬し、バックパックに詰めました。
そのうちの一個を歩きながら
ジーンズの腿にこすりつけて磨きあげました。

こんな単純な行為が男ロマンをくすぐるのです!

右に晴れた日本海を眺めながら、
ピカピカに光った柿をガブリ!

「オウェ!
 チョ~渋い!!!」

口の中が渋みで凝縮し、
梅干しを頬張ったお婆さんのようになってしまいました。

「もっと甘いの作れよ!」
精一杯の悪態をつき、
バックパックに入れた残りの柿を
海に向かって投げました。

旅は人格を表します。
僕の旅はトムソーヤではなく、
ジャックケルアックではなく、
沢木耕太郎ではない。

僕そのものの旅。
こんなことがよく起きる・・・


すぐに気分を取り戻すことができたのは、
右手に見える広大な海と、
その海をキラキラと光らせるお天道さまのお陰。

ただ歩くのも悪くない。

しかし、風景の変化が無いためか、
2時間も歩いていると少し飽きてくる。
たまに我にかえって、
「この距離、はんぱねぇ~」
って思ったりもする。

標識の輪島までの距離がなかなか縮まらない。

お金もないもんだから、
贅沢して地のものを食べる遊びもない。
ただ、ただ歩くのみ・・・

さて、計画はどうしよう?
輪島までの距離を半分に縮めたはいいが、
もう日が暮れた。

のんきなもんです。
寝袋を持っていたので、
適当なところで寝られればいいと思っていました。

そこは曽々木海岸。
「窓岩」という、
真ん中に穴があいた大きな一枚岩で有名な場所です。

なけなしのお金で弁当とワンカップを購入しました。
身体を暖かくしてサクッと寝たい。

さて、寝るのに快適な場所を見つけるのが
まだまだ下手くそな若旅。

そんな僕が選んだのは窓岩のちょうど真下。
海からの風が防げて、草が少し生えていたから。

早めの夕食を取り、チビチビとワンカップを舐め、
程良く酔ってきたところで寝袋に潜り込みました。
足が棒のようになり、疲れが来ていたので、
すぐに寝られるだろう。

窓岩がきっといい夢を見させてくれるに違いない。
波が打ちつける音は少々荒っぽいが、
それも夢の味付けになってくれるだろう・・・

波の音が遠ざかり、
いよいよ
明日への旅立ちに一歩踏み出そうとしたその瞬間!

ピカッ、ピカッ、ピカッ!

いくつものスポットライトが煌々と窓岩を照らし出したのです!

その何個かはまさに僕を照らし、
影を窓岩に落としていました。

それはまるで、
盗みに入ったルパン三世が、
待ち構えていた銭形のとっつあんに
スポットライトを浴びせられるがごとく、
「ここだ、ここだ!」と僕を浮かび上がらせるのでした。

そもそも眩しい!

寝袋に身を包んだ、
ワンカップで少し赤ら顔の僕を、
ここまで照らさなくていい。
誰にも見つかりたくないのはルパンと同じかもしれない。

すぐに窓岩の裏に移動。

光から逃れたはいいが、
今度は波の激しい音に迎えられました。
ガッツで寝よう。

しかし波の音は音量を増し、
風が叩きつけてくる。
安い寝袋の中に風が侵入し、体が冷えてくる。

早くもワンカップの効果は消え、
眠れないことのやるせなさが増してきました。
これ以上ここで寝るのは無理だ。

眠気眼で移動を開始しました。

しかしどうにもなりません。
シェルターはなく、
公園すら見当たらない。

暫く呆然としていると、
観光地となっている窓岩の駐車場に
できたてのトイレを発見しました。

真新しい・・・

障害者用トイレを覗くと誰も使っていない・・・
広い。
床が新しい・・・

寒い。
眠い・・・

決断はそんなに難しいものではありませんでした。

            つづく

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