背に腹はかえられない。
人間がとある状況で追い込まれたとき、
思考を捨てて生き延びる、
最良の選択をするための動物的な感覚があります。
その頃の僕はあまりにもその沸点が低かったので、
実を取ることに何の躊躇も要りませんでした。
現状寝るためには風を防御して、
寒さから逃れなくてはならない。
真新しい公衆便所の使われていないと思われる、
身体障害者用の広いスペース・・・
ノーチョイス!
周りを見渡すと、
運良く近くに段ボールが落ちていたので、
それを拾って下に敷き、
その上に寝袋を敷いて寝ることにしました。
ただ、問題があった。
その当時にしては最新式の仕様になっていたのです。
人感センサー
動くと電灯がつく仕組み。
すなわち、
横になった僕が寝相を変えるたびに
カチャカチャついてしまうのです。
それは男子便所、女子便所、障害者便所で
各々分かれているのですが
(上は開いていて、隣と繋がっている)、
動くたびにいちいち電灯がつくのも落ち着かないので、
気をつけの状態で寝る羽目になりました。
これではゆっくり寝られない・・・
一つ物を得れば、何かしら反作用が生まれる・・・
故事成語やことわざで何かありそうですね。
一センチたりとも動くことが出来ない。
時はすでに真夜中。
たまに車が止まり、
我慢しきれなかったのか、
勢いよくトイレに入ってきます。
男子トイレの電灯がセンサーによってつき、
各々したいことをしていきます。
それが小の場合はいいのですが、
大となると
臭いが仕切りの上の開いている部分から
ジワジワと浸透してくるのです!
ただでさえ、今いる場所の電灯がつかないように、
ジ~~~ッとこらえているところに、
強烈な臭いが僕を包みこんでくる。
それが優しい抱擁なら大歓迎なのですが。
逃れられない。
まったく動けない・・・
何台目でしょうか、
真夜中なはずなのに、勢いよく車を止め、
トイレに入ってきました。
大を我慢できなかったようです。
僕は鼻を止め、
ジッとこらえていました。
すると鼻の奥がムズムズし始め、
どうにも我慢できなくなってしまいました。
ヤバい!
堪えて、堪えてくしゃみが出るのを防いだまでは良かった。
しかしなにか変な音が口からでもなく、
鼻からでもなく漏れてしまった。
「ヘ~~ブファッ!」
と同時に少し動いてしまい、
優秀なセンサーが反応してしまい、
いるはずのない障害者用のトイレの電灯が
煌々とついててしまったのです!
何かがいる!
男はこう感じ取ったのでしょう。
その瞬間にトイレットペーパを取る音が、
「カラカラカラ~~~」
と勢いよくトイレに響き渡り、
拭いたか拭いてないのか
分からないくらいの速さでトイレを出て行きました。
遠くで勢いよく車のエンジンが吹き上がり、
シートベルトをしたのかしてないのか分からない速さで、
タイヤを
「キュルキュル」
と鳴らして去っていきました。
・・・
「あそこは出るぞ」
以後、その人伝えに地元では、
夜中の窓岩のトイレは出ると語り継がれるのでしょう・・・
おわり。

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