8.24.2009

寿町ブルース 2

それは十年以上前のこと。

穏やかな日曜日の午後、
あてもなく伊勢崎町近辺をドライブしていました。

幼馴染M氏と何でもない昔話に興じていると、
ふと、道を外れてしまったことに気付きました。


そのまま軌道修正しないまま走らせていると、
急に街の風景が一変したのです。

何だ、ここは!

まるで〝昭和の混乱″とでも言えるような
地区に紛れ込んでしまった。

時間が全く動いていない。

無数に散らばっているゴミ。

ツンと鼻につく強烈な臭い。
腐臭、体臭、酒、排水・・・
風で洗われずに堆積しているあらゆる生活臭。

しかし、昔どこかで嗅いだような懐かしさだ・・・

上空を見ると、
建物それぞれの部屋から出ている電線が
直接本体につないである。

電線が行き交い、
空中に不規則な網目を縫っている。

車がボヤにでもあったのか、焼けただれ、

見事にその混乱した風景に溶け合い、
存在が忘れられているかのよう。

キラッ。
何か鋭利なモノが刺さるのを感じた。
さっと振り向くと、
ここの住人だろうか、
何人かの、こちらを見る視線がやけに厳しい。

早く出て行けと言わんばかりだ。

白髪の男性が路上に倒れていた。

その手にはしっかりとワンカップが握られている。
白昼堂々の酔いどれ。

一般的には不自然なその倒れ方は、
ここではさほどのことではないのだろうか、
誰も関心を向けない。

そこはまるで地図上にないアジアの一国。

外観はビルに囲まれて、
何気ない街の一風景だけど、
一歩入ると、目隠しされていたかのように、
もう一つの街がある。

一体何が起こっているのだろうか?

それまでの人生で全然知らなかった世界が
まさにここにある。
好奇心に満ちあふれていた僕等は、
車を降りて目で確かめるしか選択はありませんでした。

排除という不穏な空気を感じましたが、
それどころではありません。
早く知りたい、
何が起きているのか知りたい・・・
 
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