10.21.2009

あたりまえ を疑う。

本日は田中マイコが書きます。

普段あまりテレビは観ないのですが、
確か縫い物をしながら
ふとテレビをつけたところ
川上未映子さんが出ていました。

2008年に芥川賞を受賞した作家さん。
去年、初めて彼女を知ったとき、
その存在感が私の内側に入ってきて
理由もなく、気になったことを覚えています。

ただ、彼女のビジュアルゆえか
歌手活動などもされていたからか
マスコミの取り上げ方が軽いものに感じ、
また、話題になった「乳と卵」の文体の独特さに
なんとなく気後れしてしまい、
結局作品を読まないままでいました。

テレビで観た川上未映子さん。
おそらく司会者の方の感覚が真っ当すぎて、
川上さんの受け答えの不思議ちゃん具合が
引き立ってしまい、
その会話のアンバランスさが見ものでした。

でも、ところどころで現れる川上さんの提言に
自分の深い部分をくすぐられるのです。

幼い頃から「面倒くさい子」だと思われていたと思う、と。
その理由は、こんなことを考えていたから。
「唾液は口の中にあるときは飲んでいるのに
 口から外に出たら汚いものとして扱われる。
 どの瞬間から汚くなるのか?と考えたりした」
「自分の手で自分の脚を触るとすると、
 触っているのも触られているのも両方自分だ
 ということが不思議だった。
 どっちの感覚が勝つか何度も試したりした」
という話が途切れなく出てきます。

そう話しながら、こんなのテレビで話して大丈夫ですか?
と何度も何度も確認することで
余計に不思議ちゃんになっていくのですが・・・

「自分は自分から出て行けないと感じたとき
 どうしようと思った」

彼女の真意はわかりません。
自分の思考、心、意識、魂・・・といったものと
存在が確認できる自分の身体、の分離。
そもそも分離しているのか、一体なのか。
そんなことを幼い頃から疑問に思っていたのかな?と。

テレビでの対談としては
彼女の言葉をなぞるだけで終わってしまいましたが、
この川上さんが表現する世界、小説は
一度読んでみた方がいいと感じて最新作を買いました。

「ヘヴン」
いじめの話。
圧迫感に息が詰まる。
妙な展開と登場人物のうねるような変化。

あたりまえ、を疑うことができる人なんだと思いました。
説明がつかないことに切り込んでいくイメージ。
道徳、規律、常識・・・
それ、ほんとう?なんで?
覆されるかもしれない、覆してもいいかもしれない。
答えは自分の中で出すしかない。

様々な疑問や思いを形にする。
小説という、ダイレクトではない形で表現することができる
ということにまず敬服です。どの作家さんもそうですが。
その世界観を読み解くには
一度読んだだけでは足りないと思いました。
自分が築いてきたものをガラガラと崩す勇気も必要とも。

でも、重くて痛くて読み進めるのがつらい小説でした。
時を見て、ゆっくりゆっくり読んでみようと思います。
それでも、あのときテレビをつけて
川上未映子さんへの興味を再び持てたこと、
意味を感じる秋の読書でした。


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