3.25.2010

目を向ければ有りうること 2

友人に連れられたH君と初めて会ったとき、
体格、身なりからは高校二年生には見えませんでした。

モジモジしたしゃべり方、
うつろな目、
話にまとまりがないこと、
高校生というよりは男の子という印象です。

「自分をどうにかしたい・・・」

自分ではこの状況をどうにかしないとマズイと
感じているようでしたが、
いったい何をしていいのか分からないと、
半分泣きっ面で話していました。

何とかしてあげたい。

さらに話を聞くうちに新たな側面が見えてきました。

どうやらH君は高校二年生という現状で、
漢字が全然読めないというのです。
もちろん英語、数学などは論外のようです。

フムフム、なるほど・・・

しかも小学校、中学校の頃、学校へは行かず、
フリースクールに通っていたようです。
学校へ行きたくない何かがあったのかもしれません。

ただ、これは後々知ることになるのですが、
高校の先生の会話など、大人の会話に割り込んで、
いっぱしな意見を通すこともよくありました。
まあ、若いころにありがちな、生意気なことも言うのです。

「ハイハイw」
いつも先生方は大人な対応でいなしていました。
憎めないタイプです。

ただ、H君は初めて会ったときのように、
自分にとって都合の悪いことには
極端に子供になってしまいます。

自分をどうにかしたい。
その気持ちはモジモジしながらも伝わって来ました。

では、どうすればいいのか?

もっとH君を知ることにしよう。
いろいろ話を聞いてみました。

自分のこと、
家族のこと、
将来やりたいこと・・・

やはり読み書きをできないことが
障壁となっているようでした。
勉強についていけない。

しかし、進級的には結構問題ない様だったので、
それを分かっていても勉強は二の次になっていました。
その後、何度も、勉強して漢字を覚える!
とスタートを切りしましたが、
最後まで嫌いなことを続けるのは無理だったようです。

話を聞いているうちに、
今が思春期で、
何か、殻を破りたいのだけど、
子供の自分がすっぽり覆っていて、
そのギャップにどうしていいのか
分からないのかもしれないと思いました。

そして核心へ・・・
万引きしているときどんな気持ちなのか・・・

「頭が真っ白になってよくわからない」

ん~~~

この答えはかなり厳しい。

動機なり、その時の気持ちなりはっきりすれば、
そこから糸口が見えそうなものですが、
真っ白になっては糸を手繰りようもない。

ただ、それが悪いことだという認識はある。

そこでブリーフセラピーという
カウンセリング技法の
「外在化」が使えないかと閃きました。

その技法は絵を描いてもらいます。

「君の中に虫がいてね、
おとなしい時は、ただ、そこにいるだけなんだけどね、
たまにグォ~って起き上って、暴れだす時があるんだ。
その暴れてしまう時に、
そうやって、ふと万引きしてしまうんだよ。
そんな君の中にいる虫の、大人しくしている時と、
グォ~って暴れている時の絵を描いてくれる?」

こう言います。

H君は楽しそうに
二枚の紙にそれぞれの状態の虫を描きました
なかなか上手。

「うまいじゃん!
じゃあね、この虫に名前を付けよう。
何がいい?」

「タイガがいい」

何かのキャラクターでしょうか。
きっとお気に入りなんでしょう。

「タイガね。
じゃあ、その紙にタイガって書こうか。
そして、これから毎朝、夜寝る前に
ちゃんとこの紙をひらいて、
タイガに声かけしよう。
朝は『今日もおとなしくしていてね』
夜は『一日おとなしくしてありがとう』って。
そして、何か心が落ち着かなくなった時も
サッと取り出して、
タイガに声かけするんだよ。
だから常に持っていよう」

「ハイ」

外在化とは先日書いた脱同一化と変わらないのですが、
本来自分の一部である感情、思考などが
あたかも全てになってしまう時に有効です。
この場合は擬人化(擬虫化ですねw)して、
自分の中にあるけれども「一部」として認識するのです。

どうなるか心配でした。

いつ頭が真っ白になるか分からないからです。

ただ、外在化して訓練付けすれば、
自分の中のタイガをうまくコントロールできるはず。

そんな不安と期待が交差する状態でしばらく過ごしました。

                             つづく

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